業務で従来のE-mailに加え、チャットツール(TeamsやSlackなど)、グループウェアなどのコミュニケーションツールを活用した情報共有の場面が増えています。
しかし、これらのツールを活用しようとすると「情報が多すぎて大事な情報が埋もれる」、「必要な情報を見つけるのが難しい」などが課題になることが多々あります。
このような課題を解決するための視点や、個人的な考え方の備忘録です。
内容:
1.「情報過多」と「情報不足」のどちらがいいか
目的に応じて必要な情報の量・質のバランスがとれていることが理想だが、実際にはそのバランスを取ることは難しい。
特に、情報共有を始めた段階は、量が伴わないと質につながらないことが多々ある。
業務の目的上で「不必要と分かっている情報」を減らすことが前提としても、情報共有の場面では「情報不足」となるよりは「情報過多」のメリットが大きく、デメリットも小さいことが多い印象。
よって、情報共有では「情報不足」より「情報過多」を狙いながら、必要な情報の量・質のバランスがとれるようにしていくのが基本となる。
2.ストック情報とフロー情報という概念で情報を捉える
基本的な考え方
必要な情報の量・質のバランスをとっていくために、「情報の受け手にメールや通知が大量に届く」のではなく「必要なときに必要な情報を検索し、利用可能とする」という方向性がよい。
こうすれば情報を保有しながら、必要なメールや通知の量をコントロールしやすい。
それには、ストック情報とフロー情報という概念の理解が役立つ。
例えば、次のような定義がある。
まずは情報をその性質によって「ストック情報」と「フロー情報」の 2 つに分類する:
ストック情報:特定の型によって蓄積され、分析や再利用の対象になるもの
フロー情報:特定の型を持たず、一時的な共有を目的とするもの
この情報の性質によって、保存場所や方法(場合によっては、コミュニケーションツール)を使い分けることが重要ということ。
なお、どのツールがよいかは目的や場面によるので、次のように考えてみる(個人の見解)。
情報の分類 | 説明 | 一般的に適したツール |
フロー情報 | 情報を伝える(受ける)スピードや容易さが求められる情報。特定の型は発信者に依存する。 例)会話、メール、チャットなど |
宛先を容易に指定し、都度伝える項目を決められるE-mail、チャットツール(TeamsやSlackなど)など |
ストック情報 | 情報の検索・再利用がしやすいことが求められる情報。特定の型による情報保存を重視する。 例)マニュアルや業務指示文書、業務実施で残しておく記録(報告書やノウハウ資料など)、集計・分析の対象データなど |
情報の一覧化、抽出、並び替えなどのデータベース機能をもったツール(最近ではkintoneやMicrosoftListsなど) |
なお、特定の型というのは、”型の有り無し”というよりも、項目数の多さで捉えた方がわかりやすい。
例えばメールは、「日付、送信先、件名、内容」といった項目があるが、内容の欄は自由で特定の型は少ない。この内容欄が「顧客名、問い合わせ内容、回答内容」といった項目(特定の型)で分割されると、特定の型が多い情報となる。
大事な情報が埋もれやすいのはメールやチャット
「情報が多すぎて大事な情報が埋もれる」という課題は、フロー情報とそれに適したツールを使用する際に生じることが多い。
前述のとおり、メールやチャットは「フロー情報」といえ、そのシステムはフロー情報の活用に適している。しかし、フロー情報が増えてくると、大事な情報が埋もれやすい。
なお、コミュニケーションツール(ITシステム)の多くは検索機能があり、メールやチャットの内容も後から検索して再利用することは可能。
それにもかかわらず、情報の検索や再利用に課題がある場合、
- 不要な「フロー情報」が多すぎる。
- 「フロー情報」の中に「ストック情報」が含まれている。
ということになる。
必要な情報の量・質のバランスがとれていないので、「ストック情報」に適した仕組み(データベース機能をもったツール含む)の検討も必要ということ。
一つの情報の中に、フロー情報とストック情報が混在している
フロー情報とストック情報という概念は、理解できても明確に分類することが難しく、”何を重視する情報か”という程度で考えるのがよい。
また、一つの情報の中にフロー情報とストック情報が混在していることはよくあり、一つの情報の中でも分けて考えることが重要。
例えば、「ストック情報」である報告書をE-mailやチャットツールに添付し、送付する場合は、「フロー情報」と「ストック情報」が混在した状態といえる。
一方で「ストック情報」である報告書の”保存場所”の情報をE-mailやチャットツールで送付する場合は「フロー情報」だけと捉えてよい。
この場合、埋もれてしまう「大事な情報」が報告書であれば、
- メールやチャットが埋もれても、ストック情報に適した"データベース機能があるツール"などで、必要なときに報告書が容易に検索、利用できればよいのか。
- 報告書を送付したという「フローの情報」自体が埋もれないようにしたいのか。
で、解決方法もかわる。
また、メール本文に、仕事の指示やタスクなどの重要な情報があって埋もれているなら、「ストック情報」として仕事の指示やタスク管理に適したツールは何かということになる。
グループウェアなどの「通知」が埋もれるという場合も、同様の考え方でよく、通知自体なのか、更新された情報が利用できれば良いのかで解決方法は変わる。
要は、「情報が多すぎて大事な情報が埋もれる」、「必要な情報を見つけるのが難しい」という”情報”が何であるかで解決方法もかわるということ。
3.ストック情報とフロー情報をツール整理の視点として考える
個人の見解だが、ストック情報とフロー情報はツールを評価する視点として活用すると、より活用しやすい印象。
フロー情報とストック情報を明確に分類することよりも、
- 自社にある「コミュニケーションツール」が、ストック情報とフロー情報をどのように管理できるか評価する。
- 情報共有する各情報について、どの「コミュニケーションツール」を活用した仕組みが適しているかを検討する。
で、各情報の目的を踏まえて、どの仕組み(ツール)が適しているかに当てはめていく(なければ、仕組みを考えていく)。
「ストック情報」に適したツールは、「フロー情報」に適したツールと比較し、項目名や管理方法などの事前準備が必要となることが多い(その分、検索・再利用はしやすい)。
よって、情報は何でも「ストック情報」でというより、「フロー情報」に適した仕組みで運用するなかで、「情報が多すぎて大事な情報が埋もれる」、「必要な情報を見つけるのが難しい」といった課題が顕在化したら「ストック情報」に適した仕組みを検討していくという流れが良い。
以上、「情報が多すぎて大事な情報が埋もれる」、「必要な情報を見つけるのが難しい」などの課題を解決するための視点や、個人的な考え方の備忘録でした。